〜本有引力〜

本と本がつながりますように

エルマーとりゅうに会いに行った!

もう2週間ちょっと前になりますが、7月半ばから立川のPLAY!MUSEUMで開催されている「エルマーのぼうけん展」を見にいきました。

展示を見てきてから描いた、鉛筆スケッチ

世界中で愛される名作「エルマー」シリーズ。原作は1948年〜1951年刊行、日本では1963年に3作をそろえて翻訳刊行されました。ですから、親子二代にわたって楽しんでいるという方も少なくないと思います。私自身は、子どもの頃に読んだような気もするし、そうでない気も……ということはおそらく、しっかりと読む機会がないまま、大人になってから出会ったのだと思います。それでも、子どもと一緒に何度も何度も楽しんだ物語で、自分にとって大切な本の一つになっています。タイミングよく家族みんなで行けることになり、期待は高まるばかり。

そして、開館時のエリック・カール 遊ぶための本」展以来、「がまくんとかえるくん」のアーノルド・ローベルミッフィーぐりとぐら」展など、絵本や児童文学を好む人にとって(いや、そうでなくても)たまらなく魅力的な企画をいくつも行ってきたPLAY!MUSEUM。でも、なんとなくタイミングが合わず(コロナ禍の影響も少なくないと思います)、これまで訪れないままになっておりました。ですから、ミュージアムそのものについても大いに楽しみにしながら訪れたのでした。

入り口に貼られた、書影を模した大きなポスターを見るだけでもう感激でした。

展示の導入部分は、子どもが小さい頃に家族で遊んだ「エルマーのぼうけんすごろく」をちょっとイメージさせるような仕掛け。それだけで気分が高まります。

展示の中心は、シリーズ3作の本に収められた挿画の原画です。 ルース・スタイルス・ガネットがつくりだした、不可思議な、とても優しい物語。そして、その物語の世界観を義母(継母)でもあるイラストレーター、ルース・クリスマン・ガネットが見事に再現したやわらかく繊細なイラスト。その両方が交ざり合うことで、多くの人をひきつけてやまない作品が生まれたのだと思います。添えられたテクストを読みながら絵を見ていくと、物語の世界にすっかり引き込まれます。

とはいえ、比較的小さな鉛筆画がずっと並ぶという展示。単調に感じられてしまう可能性もあるものですが、ふと見ると、羽根、チューインガム、キャンディー、歯ブラシ、みかんの皮……などなど、ところどころで絵の周りに物語の雰囲気を再現した仕掛けがあり、思わず笑みがこぼれます。

個人的に、ときどきちょっとしたラクガキ(スケッチ)をしていることもあり、本の挿画の原画など、手を動かした跡の見えるものを見られることが非常に嬉しくて、一点一点をじっくり、そしてまた最初に戻ってもう一度、とぜいたくなくらいに味わいました。

「手を動かした跡」という意味では、完成された作品以上に、習作やスケッチブックに描かれた絵に大いに惹かれています。原画の展示の後には、作者のガネットが幼い頃に物語や絵を書いたノート、イラストのイメージ共有のためにガネット自身が描いた地図やイメージ図、手作りのダミー本などの貴重な資料が並ぶコーナーがあり、これまた垂涎の空間でした。

興味深かったのは、ガネットが過ごした幼い頃の教育環境。小さな頃からお話をつくったり想像をするのが好きだった彼女が、その興味関心と才能を素直に伸ばせるような、自由でゆとりのある教育を受けることができたようです。当時のノートを見るだけで、溢れるような才能とのびのびと表現をしていた様子がうかがえるようです。

本当に見ごたえのある展示で、一緒に来ている家族がどうしているのかも考えずに、ただただゆっくりじっくり鑑賞してしまいました。流石にちょっと申し訳なかったかな、と思って展示の最後の場所にやってくると……なるほど、何も問題なかったな、と一安心。

展示の最後には、勇気と知恵をもってユニークな冒険をなしとげたエルマーの物語にちなんで、「ぼうけん図書館」というスペースが設けられていたのです。(公式webサイトの言葉を借りると)「冒険家、写真家、学者、スポーツ選手、 絵本作家や文学者ら、挑戦する」さまざまな人たちがおすすめする、“ぼうけんの本”がズラリと並べられています。そして、そのほかにも、たくさんの古今東西の“ぼうけんの本”が。わが家の子も含めて、子どもたちはそこですっかり本のとりこに。それぞれのぼうけんの世界に浸っていたのでした。

さまざまな方が選ぶ「ぼうけんの本」、バラエティに富んで非常におもしろかったです。もし自分が選ぶなら、どの本だろうか――

ということで、次回?はそんなテーマで書いてみたいと考えています。

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「エルマーのぼうけん」展@PLYA!MUSEUMは、10月1日(日)まで。
子どものとき、子どもと一緒に、この物語を楽しんだ方は、ぜひ足を運んでみてください。

最後の最後、グッズを扱うショップを出たところにあるカフェでは、なんとこんなメニューも!!