〜本有引力〜

本と本がつながりますように

「動物たちの棚」始めます

前回の更新からすっかり空いてしまって…‥‥というのがもう常套句になってしまっていますが、すっかり空いてしまいました(苦笑)。見てもらうためのメディアになるためには、もうちょっとマメにやっていかないとダメですよね。今年はちょっと気持ちを入れ替えて、がんばろうと思います。(これも毎年言っている気がします……)

まず、大事なお知らせです。

……といって、こちら(はてな)では今日が初めてなのでヘンお知らせなのですが。

もともと、2016年からnoteというプラットフォームを使ってほそぼそと本にまつわるブログを書いてきましたが、故あってほぼ1年前より「g.o.a.t.」というプラットフォームに移行しておりました。ただ、残念なことにこのg.o.a.t.のサービスが本年5月で終了するとのこと(アーカイブも残らない!)、急遽、こちらに移ることにしました。

ヤドカリの気分ですが、心機一転、もうちょっとこまめに記事を書いていけるようにがんばっていこうと思います。

さて、相も変わらずそんな情けない書き出し&年頭&いきなり出鼻をくじかれたところではありますが、明日(1/15 Sat)は久々にお店番に入ります。そして、前回棚を入れ替えてからもう半年(そもそも夏休み企画だったはずなのに……)、この機会に棚の入れ替えも行いたいと思います。

今回の棚のテーマは「動物たちの棚」

昨年9月に刊行された『本の市の本』(生活綴方)に、池上ブックスタジオでの棚主仲間・本のひとにぎりさんのお誘いで、私の本屋活動について寄稿をしました。

実際には、昨年は本屋活動としてはほとんど能動的なことができなかったので非常に忸怩たる思いはあるのですが、そこにも書いたように、「『この本を売りたい』という一冊を軸に、棚のテーマと並べる本を整えていく」というスタイルを、しばらくまた続けていこうと思います。

ということで、今回手にとってほしい一冊がこちら。

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著者の奥山さんは、京都外大を出て出版社に勤めたのち、岩手県に移住し、写真家として活動を始めます。東北の風土や文化、人の暮らしの営みを撮影しながら、人が生きることについて考えを深めるような作品制作を続けています。

前著『庭とエスキース』(同)に出会ったのは、神戸のSTORAGE BOOKSTOREさん。そのテーマである孤高の絵描き・弁造さんを撮った写真と弁造さんのエスキース(原画)の展示がちょうど開催されていて、展示から本の存在を知ったのでした。

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この『庭とエスキース』もぜひ読んでいただきたい一冊です。人が表現をするということについて、ぐっと深く考えさせられます。弁造さんの生き様が心に響くのはもちろん、その弁造さんを側で見続けてきた奥山さんの文章が、思索が、また素晴らしいのです。
 
その奥山さんの新しい本が出たことを知り、ほとんど内容も確かめずに(笑)手に入れたのが、この『動物たちの家』。しばらく積読にしていたのですが、昨秋読み始めたところ、これがまたいろいろと衝撃的な一冊だったのです。

『庭とエスキース』から想像していた静かな展開……は、奥山さんの文体という点では一貫しています。でも、写真家が語る動物の話……ということで想像するような話からは、相当に離れた世界が広がっています(いや、私の想像が一方的なのかもしれませんが)。

動物と写真家というと、いわゆる自然写真家のようなイメージが浮かぶかもしれませんが(例えば星野道夫さんとか、高砂淳二さんとか、岩合光昭さんとか)、本書で描かれる動物たちと奥山さんの関係は、全然そんなに峻厳でも崇高でもなく、非常に日常的で生々しいのです。

本書は、動物を飼うことにひとかたならぬ情熱を燃やしてきた少年の、たくさんの失敗をも含めた、その動物たちと過ごした日々を描いた記録なのです。

動物を愛好し、向き合っている方からすれば、眉をひそめるような記述があるかもしれません。でも、かつてたくさんのいのちと向き合った奥山少年も、そして『庭とエスキース』にも登場するさくらの最期を看取るときや、その後に出会った犬リュウと向き合うときの奥山さんも、その時々に真摯にいのちに向き合ってきました。そして、そのような動物たちとの時間を読み進めていくなかで、人、そして動物のいのちについて、深く深く考えさせられるのです(その思索の先に行き着くところは、一人ひとり異なることでしょう)。

この本を読むと、いのちをめぐっていろいろな思いが去来して、きっと胸がザワザワすると思います。私自身、動物を飼うことについて、すごく怖じ気づいてしまった一方で、動物と一緒に暮らしたいという気持ちもまたすごくかきたてられました。

本当に、こんなにもたくさんの動物と暮らしてきたのかーーと、感嘆してしまうほど、膨大で濃密な記録。ぜひ、皆さんご自身の目で、読んでみてください。

うまく語り得なくてもどかしいのですが、とにかく、この『動物たちの家』を土台に、これからしばらくは“動物”について考える、ちょっとユニークな本をいろいろ並べられたらと思います。家族で絶賛押しているぬまがさワタリさんの本なども並べますので、どうぞお楽しみに。


1周間前とはまったく異なるような、新型コロナをめぐる状況ですね。「ぜひお越しください」とはなかなか言いにくい状況ですので、店舗の棚を整えるのはもちろん、webでもコツコツと発信していけるようにしたいと思います。