〜本有引力〜

本と本がつながりますように

プラハとベルリン、本の旅(2) 「百塔の街」で出会った故郷の風景

今回の旅は、到着した日はベルリンで過ごし、翌日プラハに移動して2泊、それから再びベルリンに移動して3泊という旅程でした。

どちらの町でも、いろいろな書店・図書館を訪れたので、プラハとベルリン、それぞれの町ごとに紹介したいと思います。ということで、今回はプラハ編です。

ベルリンを朝早くに出発し、特急列車で4時間。お昼過ぎにプラハに到着しました。プラハには特急列車が発着する駅が2つーー観光の中心地である旧市街に近い中央駅(プラハ本駅)と、そのやや北側に位置するホレショヴィツェ駅ーーあります。私たちが乗ってきた列車はホレショヴィツェ駅に着いたので、滞在する旧市街エリアに行くにはさらに地下鉄で移動する必要がありました。

移動する前に周辺の情報を調べたところ、出国前にタバネルブックスさんに教えていただいた文具店papeloteが近くにある模様。せっかくなので、旧市街に行く前に訪ねてみることにしました。そして、その近くにあった1軒の書店から、プラハの本を巡る旅が始まります。

Map dataⒸOpenStreetMap contributors

チェコ語がまったくわからず、英語サイトも十分に渉猟はできていないので、直に見た印象の話としてご理解いただければ幸いです。

①KOSMAS(書店)
papeloteから地下鉄駅に向かう下り坂の、交差点の角にあった書店です。表紙に漢字(命)の書かれた本がディスプレイされているのを子どもが見つけて、せっかくなのでのぞいてみることに。

いわゆる町の普通の本屋さん、という感じで、入り口にはプラモデル的なものやゲームなど子ども向けのおもちゃなども並べられていました。1フロアの小さめのお店かな、と思ったのですが、傾斜地をうまく活かした建物で、入り口のところから右側に回ると1階上まで、左側に回ると1階下までスロープでぐるりとお店が続いていて、かなり充実した品揃えのお店でした。

この看板、なんだかわかりますでしょうか? ゴンドール、ローハン、モルドール……ファンの方にはおなじみ、指輪物語に出てくる国名です。左の棚はそれをはじめとするファンタジーの本、その奥にも子どもが好きな本がたくさん並んでいます。新刊の一般書も、児童書も、旅行ガイドなどの実用書も、そしてトートバッグやおもちゃなどのグッズ関連も。店舗の外から見た印象をはるかに超える充実した本屋さんでした。

②Strahovská knihovna(ストラホフ修道院図書館)
プラハ旧市街の西側、ペトシーンの丘を登り切ったところ、「プラハ城」の奥にあるストラホフ修道院は、12世紀に創設された修道院「世界一美しい図書館」とも称される、天井に壮麗なフレスコ画の描かれた2間の図書室を見学することができます。

哲学の間

神学の間

確かに圧倒的に美しい。でも、当然ながら入り口からのぞくだけなのがちょっと残念。そして、この美しい部屋の手前には、なかなか雑多な(笑)博物学的コレクションもあり、そのコントラストもまたおもしろいです。

③Univerzita Karlova(大学書店?)
旧市街広場からすぐのところにある、大学名を冠した?書店。上品な雰囲気の、スタンダードな書店という印象でした。

④Knihkupectví Luxor Quadrio(書店)
「Knihkupectví Luxor」という書店チェーンのようで、Google Mapを見たところ、旧市街の中にほかにも何店かあるようでした。私たちが訪れたのは、地下鉄Národní třída駅直結の中規模ショッピングモール内のお店。一般書も雑誌も児童書も、また絵葉書やボールペンなどグッズ系も充実した、気軽に立ち寄りたくなる庶民的なよいお店でした。

⑤Knihkupectví Academia(書店)
こちらもやはり、チェーン展開の書店のようでした。上記のKnihkupectví Luxorよりも少し落ち着いた印象で、品揃えは安定感のある感じ。出版社が手掛ける本だけでなく、手作りのあたたかさが感じられるZINEのような本や、Tシャツ・トートバッグ・カードゲームなどのグッズ類もいろいろありました。

⑥K-A-V-K-A book(書店)
上記のKnihkupectví Academiaから少し小道に入ったところにあった、アート系の書店です(日本で言えばNADiffのようなイメージ)。

入り口側のディスプレイを見ると、「民藝」「井荻」など、日本語の本が並んでいたので興味を惹かれて入ってみると……

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動物好きな子は、『動物のお医者さん』のチョビみたいなおとなしいハスキー犬に大満足。たっぷりモフモフさせていただきました(笑)。

ここは書店だけでなく、出版機能も持っており、この日もお店の奥にあるテーブルで、出版に関する打ち合わせを行っていたようです。新しいものが生まれてくる、クリエイティブな雰囲気に満ちた空間でした。

そして、入店時から気になっていたこの本。

サンズイではなくてニスイなので、どうにも確信が持てずにいましたが、店内で手に取ってみて、「やはり!」と思わず興奮。これは「土浦」茨城県土浦市の風俗を記した本でした。

実は、私の故郷はその土浦なのです。霞ヶ浦に浮かぶ帆船、その奥に見える筑波の峰……まさかこの異郷の地で、自分の故郷を描いた本を、その地のローカル・エディションで見ることになるとは。

オリジナルはやはり日本でつくられた本で、それをこの書店で抄訳版として作成したのだそうです(それ以上深いところまでは、私の拙い英語力では聞くことができず……)。お店の方も驚き喜んでくれて、オリジナル本とプラハ版とを手に持ってお店の前で写真を撮ったり。

ふと気まぐれに曲がった道の奥に、思わぬ驚きの出会いが待っている。これぞ旅の醍醐味だなぁ、と久々に、そして深く感じさせられた、プラハの本を巡る旅でした。

 

次回は、本の旅・ベルリン編をお届けします。