心のなかの“言葉”を大切にする出版社ーーナナロク社
池上線と大井町線が交差する町・旗の台。この町に、一点一点、いつも魅力的な本をつくり続ける小さな出版社があります。
ナナロク社
(そういえば、ゲンロン、コトノハ……と、池上線沿線の出版社にはカタカナ名が多いですね 笑)
豪快な、でもどこか遠くを見ているような表情でベーコンエッグ?を食べる小さな女の子。
この表紙のインパクト、覚えている方も多くいらっしゃるでしょう。ナナロク社さんの本で最もよく知られている一冊といえば、この『未来ちゃん』(川島小鳥さんの写真集)ではないでしょうか。
写真そのもののインパクトはもちろん、この表紙を含めた写真のセレクト、本が大きく開いて写真が全面見える「コデックス装」という装丁など、造本にもこだわった一冊です。装丁はいつも実験的で意欲的なデザインを手掛ける祖父江慎さん。
ほかにも、名久井直子さん、寄藤文平さん、有山達也さん、大島依提亜さん、鈴木千佳子さんなど、個性的な装丁家・デザイナーの手になるユニークな造本が、ナナロク社から刊行される本の大きな魅力だと思います。
もう一つ、ナナロク社の本の魅力は、言葉の力をとても大切にしているところ。
それが端的に現れているのが、「詩」の本が多いこと。詩歌、短歌の素晴らしい本が、次々と生み出されています。
私が最初に触れたのは、『点滴ポール 生き抜くという旗印』。筋ジストロフィーを患いながら独自の五行詩を生み出し続ける詩人・岩崎航さんの詩集です。希望ばかりではないなかから、それでも、それでも未来につながる言葉。とても大切にしている一冊です。
今回、池上ブックスタジオでも、歌集を2冊、並べています。
木下龍也『あなたのための短歌集』
岡本真帆『水上バス浅草行き』
ほかにも、『バウムクーヘン』『悲しみの秘儀』『それでも それでも それでも』『へろへろ』『おやときどきこども』『たぷの里』『せかいはことば』……と、個人的に好きな本が多すぎて、その紹介だけで延々話が続いてしまいそうです(笑)。
そんなナナロク社さんの本にまつわる展示が、ブックスタジオからもほどほどほど……近い、そして今回の「沿線“本”まつり」でもご紹介している書店・葉々社さん@梅屋敷で開催されています。
池上線沿線、という意味ではちょっと離れてはいるものの、池上ブックスタジオから近いエリアにある本屋さんとして、ぜひ皆さまにおすすめしたのが、この葉々社さん。
今年(2022年)4月にオープンした新しい書店です。長く編集の仕事を続けてきて、本の世界に深く関わってきた店主の小谷輝之さんは、本当にすばらしい“本の目利き”。人文、社会科学、自然科学、文学、詩・言葉、写真、デザイン書などを中心に、いずれも「考えるきっかけになる1冊」を意識して選ばれた本が並んでいます。
店の奥には、小上がりのちょっと落ち着くスペース。靴を脱いで、古書の棚や折々に企画される展示・フェア、店主の小谷さんとの本談義を、ゆるりと楽しんでください。
そして、その小上がりスペースで現在開催されている「ナナロク社の造本展」、ブックスタジオの棚主さんが、さっそくその展示の様子を知らせてくれました。
※お店の許可を得て撮影しております。
私も早く見にいきたくなりました! 商店街を歩くのも楽しい梅屋敷、ぜひ足を運んでみてください。
「ナナロク社の造本展」@葉々社(京急・梅屋敷駅より歩3分)
10月15日(土)〜11月11日(金)
10時〜20時・火曜定休
【池上線開業100周年記念企画 沿線“本”まつり/開催概要】
◆会場:池上ブックスタジオ(東京都大田区池上4-11-1第五朝日ビル1F/東急池上線「池上」駅より歩8分)
◆期間:10月1日/7日、8日/14日、15日/21日、22日/28日、29日(金・土)
◆オープン時間:各日13時〜18時
◆イベント内容:
・池上線沿線にまつわる本の販売(主に新刊書籍)
・池上線沿線にまつわる本の展示
・沿線にある書店や出版社の紹介