〜本有引力〜

本と本がつながりますように

2023年春、小さな卒展

※旧ブログ(note、g.o.a.t)のときから、本業その他の忙しさによって、更新頻度が極端に落ちるブログで申し訳ございません(この言い訳ももうすっかり定番になっております)

最後の更新は昨年大晦日。今年ももう半分を終えようかというところで(昨日はもう夏至でしたね)、ちょっと気持ちを入れ替えて、久々の記事を上げます。

振り返ると、どんなに忙しいときだって、「本の話」はいろいろあるもの。タイムリーさとは程遠い内容で恐縮ですが、記録を残しておくためにも、しばしちょっと前の話にお付き合いいただければ幸いです。

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さる3月10日(金)・11日(土)の2日間、池上ブックスタジオでは、はいくやさんのお声がけで、「小さな卒展 - 12歳が選ぶ、卒業と思い出の本」という企画を行いました。

はいくやさん謹製

3月は卒業の季節。この春に小学校を卒業するタイミングだった6年生3名が、これまでに読み、触れてきた思い出の本を選び、コメントを添えて展示しました(我が家の子も参加)。

みなブックスタジオにも時々来てくれる、本が好きな子たち。どんな本を、どんな気持ちで読んできたのか、その思いを知ることができるのも楽しみで、また親としても子がどんな本と読書との出会いを経てきたのか、小学校生活を振り返りつつ改めて確かめることのできるよき機会となりました。

一応、一人5タイトルずつを目安に考えていましたが、用意した本もコメントの書き方も、それぞれ自由なスタイルに。併せて、親にとって思い出に残っている本を添えたり、子供たちが自分でつくった本(!)も並ぶなど、とても豊かな空間ができました。

私の子が選んだのは、次の5タイトル。

1)はやみねかおる『都会のトム&ソーヤ』シリーズ
2)はやみねかおる『ぼくらの先生!』
3)辻村深月『かがみの孤城』
4)ぬまがさワタリ『図解 なんかへんな生きもの』他、以後の動物シリーズ
5)モーリス・センダック『そんなとき なんていう?』

ご覧のとおり、YA向けの作品の著者として大人気のはやみねかおるさんの本を大変愛好しています。4年生の半ばくらいからでしょうか。学校の図書室からも、地元の図書館からもよく自分で借りてきて、いったい今までに何タイトルを読んでいるのか、私ももうまったくわかりません。

小さな頃の絵本から、本は好んで読んで(見て?)いたので、とりあえず身近にいろいろな本を置いてみていました。好みの本・興味を持った本から、「これも読むかな?」という本を類推しながら、成長に合わせて本のジャンル・バリエーションが広がるように、さり気なく工夫をしてきたつもりです。その中で、意外なものに興味を持ったり、逆に関心を示さなかったり。そういう一つ一つも、親としてはおもしろかったです。

その過程で、明確に子自身が見つけて、おもしろいと感じ、どんどん読書を進めていったのが、はやみねかおるさんの作品でした。親のサポートや介入なく、自ら選びとった本として、私も非常に印象に残っています。

本棚はあれこれ見ているので『街トム』シリーズの存在はもちろん知っていましたが、自分では全然読んだことがありません。そのなかで唯一、珍しく子が「これ、読んでみなよ」と言って勧めてくれたのが2の『ぼくらの先生!』。子どもは特にそこまで意識していたわけではないのだろうけれど、主人公である元教師とその妻の関係に、じんわり心を打たれました。

卒業する子たちが本を選んで並べる、が企画の趣旨でしたが、前述のとおり、親たちもそれぞれ、ちょっとだけ本を持ち寄りました。つい、本を並べたくなるんです(笑)。

私が用意したのは、C. S. ルイス『ナルニア国ものがたり』シリーズ(新訳版ではなく、瀬田貞二さん訳の岩波文庫版)

写真中央、テーブル中央の台の上に、『ナルニア国ものがたり』シリーズが。

先にも書いたように、子の読書が広がっていくなかで、興味を持ちそうな本をそっと置いておいたモノのなかの一つ(実は、自分自身が子供の頃に読んだ本そのもの。地元の家に大事にとってありました)。ちょっと記憶が曖昧ですが、たぶん3年生になる頃だったのではないかと。絵本から徐々に移行して、文字が大きく挿絵が多めの物語を自分で読むようになり(原ゆたかさんの『かいけつゾロリ』シリーズなどを愛読)、さて次はどんなものがいいのかな?と考えていた頃で、まだちょっと難しいかも?と思いつつ用意したものでした。

でも予想外にハマったらしく、気づけば自分でどんどん読んでいって、夏頃には全作読んでいたような記憶があります。視覚的な印象の強い本から、自ら能動的に読む本へ。子の本との付き合い方が一段階変わった、そのきっかけとなる本だったんじゃないかーーそういう意味で、小学校6年間の子の読書経験のなかで、私にとって特に印象に残るタイトルだったのです。

私にとっても、子の小学校時代の本との関わりーーそれは半ばは自分自身の本との関わりでもありますーーを振り返る機会となる、感慨深く、そして何よりもいろいろな本に囲まれた楽しい企画となりました。

一緒に企画に関わった子どもたち同士は、池上の町、そしてブックスタジオを通じてよい友人関係を築いています。この子たちがいずれ、お互いに本を通したやり取りなどしてくれたらいいなぁ、などと思いながら、イベント終わりにみんなの写真を撮りました。

卒業がからまもなく3ヶ月。子は相変わらずはやみねさんの作品や、ぬまがささんの本を楽しく読みつつ過ごしています(あと最近は『十二国記』シリーズにはまってます)。おせっかいにならない程度にときどき新しい刺激を挟み込んで、自分自身で読書の地図を広げていくためのきっかけづくりができたら、と思っている今日この頃です。