〜本有引力〜

本と本がつながりますように

【振り返り】思った以上に、できていない2022

晦日目前で急に予定が変更になり、夕方、家でふっと少しだけ時間ができたので、今年の日記(メモ)をザッと振り返ってみました。すると、思った以上に同じようなことを日々積み重ねていたこと、そして思った以上に大したことができていないという事実に、愕然としました。

仕事の面では、夏に担務替えがあったこともあり、2種の定期刊行誌を数点、着々と編集し、いずれも(本の内容面もデザイン的な面も)納得の出来で、年末には本当に久しぶりの「増刷」も経験できました。

でもその一方で、そのほかの書籍の企画は今年もかたちにならないまま。もちろん仕込みをして進行しているものはあれど、企画を明確なかたちにして、ということが今年もできなかった。その事実には落ち込むし、確かに日記で振り返る自分のやっていることから考えると、当然の結果なのでしょう。

仕事以外の面では、従来からの池上ブックスタジオでの出店に加えて、縁あって春から、神保町に新しくオープンしたPASSGEにも参加しました。本が好きで、本と多様な付き合い方をされている人たちに、この場を通してお会いすることができました。

それはとても貴重な経験でしたが、PASSGEという場が持つポテンシャルを考えるほどに、自分がここでできることの少なさが身にしみて感じられてきたのも確かです。仕事と家のことをこなしつつ、池上に加えて神保町まで、というのはなかなか難しく、通える頻度が少ないとますますできることが限られていく。

そんな事情もあり、ちょうど半年で退店することを選びました。その時間とエネルギー、思考を、地元である池上ブックスタジオのほうに注ぎたい、というのがいちばんの思いでした。

でも、その池上ブックスタジオに、果たしてどれだけのことができたのでしょうか。

こちらをご覧の方はご存知の方も多いかと思いますが、10月のほぼ1ヶ月間、池上ブックスタジオでは、池上線開業100周年記念企画「沿線“本”まつり」を開催しました。

お陰様で、個性的な出版社さんや書店さんなど沿線の本にまつわる人・場とたくさんの縁ができ、会期中はさまざまなチャネルからイベントのことを知って、初めて訪れてくださる方も非常に多くいらっしゃいました。なにより、“本屋”として、たくさんの本が旅立っていったことは本当に嬉しいことでした。この他にも、ブックスタジオの内側として目標としていたことについても目に見える成果が得られ、イベント単体で見れば、大成功だったと言ってよいと思います。

ただ、いち棚主としてこんなことを言うのは非常に差し出がましいことではありますが、今年の秋でオープンから2年、当然ながら陰に陽にさまざまな課題が生じているのも事実だと思います(それはある意味、場として当然であり、健全なことだとも思います)。

それこそ運営者側でもない自分が、あれこれ考えたり言ったりすることではないとは思いつつ、よりよい場として、より多くの方がここに楽しく関わっていただけるように、参加している者としてできる限りのことをしていきたいという思いを持っています(自分がここで何かをしたい、という以上に)。

その意味で、10月のイベントは成果も多々あったのは確かなのですが、池上ブックスタジオの「これから」に向けて、どれだけポジティブなものを提示できたかというと、まだまだ不十分だったな、というのが正直な印象です。

そして、そのような結果ながら、実行にあたっては本当にいっぱいいっぱいでした(9月10月は、ほぼダブルワークのような状況)。本屋活動(“本”業)を持続的に行おうと考えるならば、そのやり方、そして何に焦点を当て、どんなことをすべきなのか、真剣に見直し、計画を考えていかなければいけないと思います。

仕事についても、“本”業についても、「思った以上に、できていない」という感覚。なんとなく、上記のようなモヤモヤが残ったからなのだろうな、と思います。動いたことがちゃんとかたちになっていないのですが、たぶん、動き方がよくなかったり、そもそも動きが足りなかったり。なんというか、堂々巡りしているような。

なんとなく、自分のなかだけの閉じた回路でいろいろなことが回っているではないかと思います。これは特にコロナ禍になって以降、ずっとつきまとっている感覚で、周りを見ていていろいろなものが動き出しているにもかかわらず、自分が外に開いていけずにいるように感じることが、そのモヤモヤに拍車をかけているのではないか。

引っかかっている部分だけはなんとなく抽出できたような気もするけれど、どうやったらそこから「開いて」いけるのか、具体的にはあまり見えていません。そんなわけで、目標といっても抽象的で、年明けもしばらくモヤモヤせざるをえないかなとも思っています。

とはいえ、器用なことはできないし、手を動かしてやってみないと何も実感できないタイプなので、まずは仕事でも、“本”業でも、具体的な企画をつくり、動かすことで、その先の道を開いていきたいと思います。

……と、後ろ向きな感じのことばかり書いてきましたが、本に携わることは、いつも嬉しく楽しいこと。

「沿線“本”まつり」会期の真っ最中、10月23日には、本屋・生活綴方の有志の方主催の「妙蓮寺 本の市」に出店しました。

コロナの流行もちょっと一段落した秋の時期、各所でイベントごとも多く開かれ、出店する側も、来場されるお客さん側も、そうした場に集ってやりとりをすることが本当に楽しい、という雰囲気に満ち溢れていました。

そうだ、本を介して話をすること、おしゃべりをしながら本を手渡すことって楽しいな、と、初めて“本”業を行ったときに感じたのでした。

その原点を大切に、これからすべきことも考えていければ。

来年は、2年に一度の「おうち、」が開かれる年。いまはまだ何のイメージもありませんが、こちらもやはり、楽しく考えていきたいです。


そんなはなはだ頼りない「さるうさぎブックス」ですが、来る年もどうぞよろしくお願い致します。