〜本有引力〜

本と本がつながりますように

「ないもの、あるもの」

twitterのプロフィール欄に「本のこといろいろ、(…)「はてなブログ」で不安定更新。」と記していますが、うっかりすると3ヶ月〜半年くらいそのまま。不安定にも程がありますよね(笑)。本業が忙しくなると、たちまち“本”業が疎かになってしまうのです……

……とこんな言い訳の書き出しも、もうこのブログの枕みたいなものかもしれません(苦笑)。ちょっとだけ息をつける折に、拠点である池上ブックスタジオの棚の入れ替えを行うため、ひさびさの投稿です。

2022年初から設けていた「動物の棚」は、ある意味すごくわかりやすいテーマだったと思います。「おお、こんな本を並べるんだ!」と楽しんでもらえる工夫はできたと思いますが、とはいえ「動物」。モチーフとしてはとってもわかりやすい。

でも、今度のテーマは、なんともわかりにくいのです。なにしろ、そのエッセンスとなるものを、私自身がまだうまく言葉にできないくらいですので(私の思考が明晰でないこと、そして表現力が拙いこと、もその大きな要因ではあるのですが)。

テーマは「ないもの、あるもの」

見えない、聞こえない、(かつてはあったけれど)もう存在しない、(地球にはあるけれど)宇宙にはない、そもそも世界自体が存在しない……

いろいろな「ない」がある。その意味するところも、程度も、本当にさまざまな「ない」が。

ない、欠けている、不在……一般的に、それはネガティブなこととして捉えられやすいものだと思います。実際に、何かが「ない」ことによって不便や不利益を被ったりすることは、生きていくなかで必ず起こることでしょう。それについて、積極的に前向きな意味を付与しようというつもりはありません(場所がなければ本を売ることもできませんし、棚があっても並べる本がなければ、それを届けることもできません……)。

ただ、その「ない」を通して見えるもの、「ない」ことから立ち上がってくるもの、というのもまたたくさんあるのではないかと思います。ほかでもない私自身が、自分には「ない」、誰かにとっての「ない」を知ることを通して、それまでの自分には「ない」ものだった新しい視点や世界が「ある」ことをたくさん知ることができました。そして、そんな経験を得られたのは、やはりたくさんの本との出会いからでした。

「ないもの」と、そこから見えてくる「あるもの」。

だいぶん抽象的だし、一つのテーマとして立てるにはあまりにまとまりがなく掴みどころがないけれど、それでも今、非常に大切なことなのではないか――日々生活しながら、また本を読みながら、もやもやくすぶるように感じています。だから、これからしばらく、この「ないもの、あるもの」というテーマで、本を並べていきたいと思います。

テーマの設定の仕方から、どうしても障害的な意味での「ない」に関わる本が少なくないと思います。でも、「社会を変えよう」みたいなことを主張するようなつもりはまったくありませんし(私自身は、面倒なことはしたくない、安きに流れる、とても意識の低い人間なので……)、もっともっと広い意味で「ないもの、あるもの」を受け取り、考えてもらえたら、というふうに思っています。

何よりも、読むことを通して、それぞれの方なりの「!」という刺激を、受け取ったり発見していただけたら――そう願っております。

この写真にある本以外にも並べる本がありますし、また今後も随時、本を足していければと思っています。ぜひいろいろとお手にとっていただければ。また池上にいらっしゃれない方も、このブログなどを通じて興味を持った本があれば、ぜひお近くの書店で探してみていただければ嬉しいです。

「ないもの、あるもの」――あれこれ考えてみて、あれこれお話ししましょう。

※明日7月8日(金)13時〜18時、久々にお店番に入ります。平日ではありますが、よかったら遊びにきてくださいね。